旅日記:フジタのアトリエ

この S が目印
この S が目印

この日はフジタの晩年の家とアトリエ(La Maison Ateler Foujita)を訪れました。

パリから南西に約30キロ離れたEssonne県の小さな村、Villiers-Le-Bâcleという所にあります。

 

フジタは晩年この家で君代夫人と共に過ごし、制作していました。

家の随所にフジタの手製の家具やオブジェが置かれ、絵が描かれています。

如何にフジタがこの生活を楽しみ、この空間に愛情を持っていたかが伝わります。

 

 

今回フランスに行くにあたり、どうしても行きたかった場所の一つです。

交通の便があまり良く無く、そして今回とんでもないトラブルもありましたが・・・この日の事は一生忘れないでしょう。

本当に素晴らしい一日でした。

でもまずトラブルの話からさせて下さい(^-^;)

 

フジタのアトリエへはパリからですと、車か公共交通機関です。

そして車は無いので当然公共交通機関を乗り継いで行く事になります。

RERという電車に乗って、Massy Palaiseau駅で降りてバスで行くか

もう少し先のGif-sur-Yvette駅で降りてバス、です。私は前者の駅で降りる事にしました。(因みにこの二つの駅は結構離れてます)

 

この日の為に、RERの時刻表もバス会社の時刻表も調べ、入念にチェック。

アトリエ開館時間に余裕を持って着ける時間に逆算していざ出発。

 

Massy Palaiseau駅は結構大きな駅で、ここでバスに乗り換えです。

最初のバスターミナルでは場所が違うと言われ、線路を渡り別のターミナルへ。

ここで衝撃の一言・・・。

 

『ここからはこの方面のバスは無い』

 

ええ!?私調べたよ!?どういう事!?!?

何度職員に聞いても『ここからはこんな所に行くバスは無い』の一点張り。

別の職員も出て来て、3人がかりで「このバスは無い」。

バスの時刻表もバッチリ日本からプリントしたのに。。。

「じゃあどうやって行けば良いの?」と聞くと、ヴェルサイユに行け。と。。

 

地理全く解らないんですけど・・・(TAT)

 

ここで一つの決断をせねばなりません。

選択肢は二つです。

この日は土曜日。

もう一つの駅迄電車で行って、バスで向かう。ただし土曜日はバスが運行していないラインが殆どで、目的地迄のバスがない可能性が大。

 

もう一つは職員の言う通り、ヴェルサイユまで行って、そこからTAXIかバスか・・・。(でもバスがあるかどうか解らないと言われました)

 

悩んだ結果・・・ごめん、職員は信用しないヨ!!(笑)

イタリアもなかなかでしたが、フランスも結構いい加減な事が多いから・・・。

(ゴメンナサイw)

 

結局、そのままチケットを買い直し、Gif-sur-Yvette駅まで。

因みに、、まだまだトラブルは続きます(^-^;)

 

再びRERに乗りGif-sur-Yvette駅に到着。

既に不安で一杯ですが、不安的中・・・orz

 

フジタは家をもつに際して、パリの喧噪を離れ制作に集中する為に、静かな場所を希望していました。まあ、、平たくいうと田舎です。

 

駅の周辺、何も無いんです・・・(TAT)

 

そしてバスの時刻表を調べたら・・・土曜日は運行していませんorz

 

更に・・・TAXIはおろか、車も殆ど通りません・・・orz

人も居ないので、どうやって行けば良いか、右も左も解りません。

ここで再びどうするか決断せねばなりません。

 

そこで私・・・歩く事にしました。

写真はバス停にあった地図ですが、恐らく歩いて40分〜1時間程度とみました。

目的地迄のバス停の名前を全て書き写し、道路の形を覚えて・・・出発です(T∇T)ノ

物凄〜くのどかな道。歩道も無い場所に出て、歩き続けます。途中バス停をチェックしながら・・・どうやら間違っていない様子。緑、緑、緑。

誰か居たら道を聞こうと思っていましたが人が通らないのでドキドキし通しです。でも、この景色の良い事!(あくまで前向きに 笑)

 

暫く進むと家が見え始めました。

何とも可愛らしい家。でも人の姿はなく・・・。

そしてまた緑、緑、緑・・・。

 

不安になった頃、どこかで見た様な景色に変わり・・・

発見!フジタのアトリエです!!!

家を見付けてこんなに嬉しい気分になったの、初めてかもしれません(^-^;)

 

でも・・・まだトラブルは続くんですorz

このフジタのアトリエの横に、受付と資料室のある建物があります。行くと受付の女性が申し訳なさそうに一言。

『今日はアトリエに入れるか解りません』

驚いて理由を尋ねると、どうやらセキュリティシステムのトラブルがあったらしく、今作業員を呼んでいる所だそう。

まず作業員がいつ来るかも解らないし、どの位で修理出来るかも解らない。そして直らない限りアトリエにも入れないのだとか。

 

ここまで来てそんな・・・と思いましたが『閉館ギリギリまで待ってて良いですか』と聞くと二つ返事でOK。お茶を頂き、そしてお詫びにとフジタの画集(冊子?)をくれました。フランスでこんなおもてなし・・・初めて(笑)

 

私と同じ様に修理を待つ人たち。フランス人もいましたし、日本人の方もいました。同じ一人旅の方だそうで、話を聞いたら・・・なんとバスで来たと言うではありませんか。。

どこの駅からバスに乗りましたかと尋ねると、私が最初に降りたmassy palaiseau駅orz

やっぱりバス出てたんじゃん!!!(T∇T#)ノ

 

バスの件は腹が立つというより『やっぱりね・・・』という感じでしたw

気持ちを切り替え、待つ間、別室のTVでフジタの紹介の映像を見ました。

 

暫く待ち、いよいよ閉館時間が迫った頃・・・修理が終わったと言う事で、無事に中に入れる事になりました!!私もですが皆大喜び(*゜▽゜ノノ゛☆

 

いよいよアトリエです。

中は写真撮影NGですので、悪しからず。

 

ここは道路側から見ると二階建てに見えますが、実際は三階建てです。

一階部分はキッチンと食卓等があります。ここから見学スタートです。

 

食卓はスペイン製の家具で統一されています。

テーブルにはフジタの絵付けした皿やカップが並びます。

キッチンには猫の絵が描かれた花瓶が置いてありました。

タイルはオランダのアンティークのもの。中にはフジタが真似て絵付けしたものもあります。

 

階段を上がると玄関、リビング、寝室です。

居間と寝室はワンルームに改装され、フジタ手製の屏風風の衝立で仕切られています。額等も自分で作っていたというフジタ。天使やハート、鍵に動物などの装飾も自分で作っています。

 

リビングのテーブルの上には可愛らしい絵付けの施された箱が。これはフジタが君代夫人の為に描いたもの。プレゼントを入れる箱も、自ら作っちゃうのが凄いですね。

暖炉傍や壁にはステンシルで絵が。何とも愛らしいです。

そしていよいよ3階に向かいます。

 

ここは君代夫人でもあまり入れなかったと言うアトリエです。

至る所に道具があり、木工をする場所、絵を描く場所、ミシンを踏む場所、、と一見雑然としているようですが、キチンと目的に応じた場所ふりになっている様です。

そして奥の壁にはランスのノートルダム・ド・ラ・ペ礼拝堂に描いたフレスコ画の習作が描かれています。

 

主が居なくなったと言うのに、全くそんな感じがしません。 

なんだか、もう少し待ってたらフジタが来て仕事をすぐに始めそうな感じさえします。

 

隅から隅迄愛情と制作の意欲に溢れた空間でした。

 

 

この時時計は既に閉館時間を過ぎていました。スタッフの方が気を遣ってゆっくり見せてくれた様です。(これもフランスでは稀・・・感謝です!!)

 

帰りのバスの時間を逃し、また歩くかーと思っていましたらば先程のスタッフのお姉さんが車で通りかかり、私含む3人を近くのRERの駅迄乗せてくれました!!一時はどうなる事かと思いましたが、色んな出逢いもあり、終わりよければ全てヨシ。

 

素晴らしい一日でした。

またいつか機会があれば・・・訪れたいです。

 

<La maison atelier Foujita>


所在地 :7, Route de Gif, Villiers-Le-Bacle 

■ Tel/fax :01.69.85.34.65 

■ 開館 
土曜日:14h-17h

日曜日:10h-12h30、14h-17h30

土・日は入場無料(予約も不要、ただし1グループ最大6名まで)


平日:(火・木・金曜日に開館)は要予約。

 

次はフジタを追って、ランスという街に移動します。

 

コメントをお書きください

コメント: 6
  • #1

    ナビン (水曜日, 26 12月 2012 23:39)

    ドキドキしました。
    僕も海外旅行は1人旅が多くてアポなしも多いので、似たような経験もあります。
    でも、そういうことが後々に記憶に残って、やっぱり行っててヨカッた!
    となるんですよね ‼

  • #2

    nanamonda (木曜日, 27 12月 2012 11:58)

    ☆ナビンさん
    ナビンさんも似た様な経験が?(^-^;)
    こういうハプニングも楽しめたら良いのでしょうけど、途中何回も大丈夫だろうか・・・と不安になりました(笑)
    しかし確かに記憶力の悪い私でも、この日の事は色んな意味で忘れられない出来事としてバッチリ記憶に残りました(笑)

  • #3

    ひろぬま (木曜日, 27 12月 2012 21:59)

    フジタの最後のアトリエに行かれたんですね。このアトリエは先日書きましたNHKの『藤田嗣治の20世紀』でも取り上げられ、内部の様子や彼の造った小物やアクセサリー、更にランスの教会のフレスコ画の下絵なども紹介されていました。とてもいいアトリエで、とてもいい住まいですよね。いろいろあった彼の人生も、最後に、この村のこのアトリエで、過ごせた時期があったと思うと、ホッとします。

    次回は大聖堂と、小聖堂のフジタのフレスコ画とステンドグラスですか?  楽しみです。

  • #4

    nanamonda (金曜日, 28 12月 2012 12:48)

    ☆ひろぬまさま
    ここはずっと行きたい場所だったので、本当に辿り着けてホッとしました(笑)凄く田舎ですが、家の隅々迄工夫が凝らされ、フジタが如何にこの生活を愛していたかがとても伝わってきました。
    そしてお察しの通り、次はランス大聖堂とフジタの手がけた教会に向かいます(^^)ノ

  • #5

    M (火曜日, 08 1月 2013 18:05)

    遅ればせながら、本年も宜しくお願いします。

    この回の記事はハラハラしながら見せていただきました。
    奈々ちゃん凄いです。
    そして、フジタのお家は北欧を思わせる佇まいですね。
    旅行記とても楽しく拝見させていただきました。
    次に行くとしたら、どこのお国なのかなぁ?

  • #6

    nanamonda (火曜日, 08 1月 2013 18:20)

    ☆Mちゃん
    コメント有難うございます(^^)こちらこそ、本年もどうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m
    私も改めてこの日記読んで『よく辿り着けたよなぁ〜』なんて感慨深いです(笑)色んなトラブルと偶然が重なりましたが、結果的にやはりこの日行けて良かったです。忘れられない一日となりました。
    しかし既にもうどこかに行きたい気持ちがムクムクと・・・(笑)
    ヨーロッパもまだまだ行きたい場所が沢山!です。でもまだ行っていない場所も気になります。やはり美術館で決めるでしょうね(^^)
    Mちゃんはまた旅行のご予定ありますか?Mちゃんの旅日記は歴史やその土地の情報が凄く解り易く書かれているのでとっても好きです〜♬